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上場株式等の配当所得等に係る課税方式の統一について

上場株式等の配当所得等に係る課税方式の統一について | その他
こんにちは。
中小企業の事業承継と成長支援に強いアイユーコンサルティンググループです。
じめじめと蒸し暑い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
 
さて、今回は令和4年度税制改正において改正されました上場株式の配当所得等に係る課税方式の統一について解説いたします。
 
■現行の課税方式
平成29年度税制改正により、上場株式等の配当所得等につきましては、税務上の有利・不利を踏まえて所得税と個人住民税で異なる課税方式を選択できることが明確化されました。
例えば所得税では総合課税又は申告分離課税を選択し、個人住民税では申告不要制度が選択できる等です。
特定口座内で源泉徴収を選択している株式等の譲渡所得や上場株式等の配当所得は、所得税の確定申告をする必要はありません。確定申告をしない場合、国民健康保険料の算定や、70歳以上の医療費の自己負担割合の判定をする時、これらの所得は含まれません。
 
ただし、所得税の計算において他の口座との損益通算や譲渡損失の繰越控除の適用を受ける場合には、所得税の確定申告をする必要があります。
この場合、国民健康保険料の算定や、70歳以上の医療費の自己負担割合の判定に、これらの所得が含まれることになります。つまり、所得税の申告をすることで、結果として、国民健康保険料などの負担を増加させるケースがあるのです。このようなケースにおいて、所得税については申告分離課税を選択し損益通算や譲渡損失の繰越損失の適用を受け、個人住民税については申告不要を選択し、その結果、国民健康保険料の算定や、70歳以上の医療費の自己負担割合の判定に含めないようにすることができます。
このように現行の制度では、所得税と個人住民税とで異なる課税方式を選択する結果、その選択によっては課税上で有利不利が生まれる状況となっておりました。
 
なお、従来からこの課税方式について適用を受けるためには、所得税の確定申告書を管轄の税務署に提出した後に、お住まいの市町村に住民税の申告書を別途提出する必要がありましたが、令和3年度税制改正により令和3年分以降の確定申告書の第二表に個人住民税に係る申告不要の欄が設けられたため、この欄にチェックをつければ所得税と個人住民税で異なる課税方式を選択するために、上述したように市町村に住民税の申告書を別途提出する必要がなくなりました。そのため、納税者の事務手続きの面でもメリットがある制度となっておりました。
 
■改正後の課税方式
現行の課税方式については、上述したようなメリットがある反面、国民健康保険等の保険料や医療機関における窓口の負担にまで影響が及ぶことについて問題視されておりました。
また、金融所得課税は所得税と個人住民税が一体として設計されてきたことなどを踏まえ、公平性の観点からも従来の制度について改正を必要とする声があがっておりました。
  
そこで、令和4年度税制改正により、令和6年度からは、所得税と個人住民税の課税方式を一致させることとなり、所得税と個人住民税とで異なる課税方式を選択することができなくなります。
こちらの改正については令和5年分の所得税の確定申告(令和6年分の個人住民税)から適用されますので、適用開始時期には十分ご留意ください。
実務上では令和4年分の所得税の確定申告(令和5年分の個人住民税)までは従来通り、所得税で総合課税又は申告分離課税を選択し、個人住民税では申告不要を選択することができるため、国民健康保険料等の負担を加味して選択し、令和5年分の所得税の確定申告(令和6年分の個人住民税)以降については国民健康保険料等への影響も加味した上で、所得税と個人住民税を合わせて申告不要を選ぶのか、又は申告をするのかの判断を迫られることとなります。
 
また、これを受けて、上述しました令和3年分の確定申告書から設けられた申告不要欄については、令和5年分の確定申告書から廃止の流れとなる見込みです。さらに、従来から上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除について、所得税においては期限後申告においても適用を受けることができることとされ、一方、個人住民税においては納税通知書送達日までに住民税の申告書等を提出すれば、所得税と異なる課税方式に変更可能とされておりました。
そのためこの点につきましても所得税と個人住民税の適用要件が一致していないため、法整備が今後されるのではないかと考えられます。
 
■最後に
いかがでしたでしょうか?
これらの実施まではまだ期間があるため適用開始時期が延長するなど、途中で制度内容に変更がある可能性がありますので、今後の動向を注視する必要があります。
どのような課税方式を選択することがご自身にとって最適か税理士と一緒にシュミレーションしてみることがよいかと思います。
 
税務に関するお悩みがある方は、アイユーコンサルティンググループまでお気軽にご相談ください。

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