2020.08.11
受取順序に注意!確定拠出年金の落とし穴
こんにちは。
中小企業の事業承継に強い税理士法人アイユーコンサルティングです。
2020年6月に確定拠出年金制度の改正のための法律が公布されました。
将来に向けての個人の資産形成の重要性が高まっています。
しかしながら本制度は、加入時以上に受給時の選択が大変重要となっております。
そこで、今回のブログでは、企業型確定拠出年金(iDeCo)受給時の注意点について解説いたします。
概要
企業型確定拠出年金(iDeCo)は「401k」とも言われており、企業が毎月積立し、預金や投資信託など従業員が商品を選ぶことができます。
選んだ商品を運用した後、積立額と運用損益の合計額を原則60歳以降に年金または一時金で受け取れますので、老後の資産形成にとても有利な制度です。
iDeCoの税制上のメリットとして、
① 掛金が所得控除される
② 運用益が非課税
③ 年金または一時金受取時に税制上の優遇がある
と、いうものがあります。
iDeCoは60歳になると受給可能になり、70歳までの間に受給時期を指定することができます。
複数の退職一時金を一定期間内に受け取る場合であっても、退職所得として退職所得控除が可能ですが、その受け取り順によって退職所得控除の計算が変わるので注意が必要です。
共有期間の計算方法
会社から退職金を受け取った方が、その年の前年以前4年以内にも他の会社から退職金を受け取っており、勤続期間が重複している時は、共有期間として退職所得控除額が計算されますが、iDeCoや企業型DCの一時金の場合は、iDeCo等の一時金の支払を受ける年の前年以前14年以内に支給を受けた退職金について共有期間が発生することとなります。
そのため会社からの退職金の後にiDeCoの一時金を受け取ると、共有期間が生じることがほとんどになります。
例えば、次のケースを検証してみましょう。
(前提条件) 退職金2,000万円(勤続期間30歳~60歳・30年)
iDeCo一時金1,000万円(加入期間40歳~60歳・20年)
① 60歳で退職金、65歳でiDeCoを受け取る場合
・退職金受給時
退職所得控除額:800万円+〔70万×(30年-20年)〕=1,500万円
退職所得:(2,000万円-1,500万円)×1/2=250万円
所得税:250万円×10%-97,500円=152,500円
・iDeCo一時金受給時
共有期間:60歳-40歳=20年
退職所得控除:800万円-(40万×20年)=0万円
退職所得:(1,000万円-0万円)×1/2=500万円
所得税:500万円×20%-427,500円=572,500円
所得税合計:725,000円
② 60歳でiDeCo、65歳で退職金を受け取る場合
・iDeCo一時金受給時
退職所得控除:800万円
退職所得:(1,000万円-800万円)×1/2=100万円
所得税:100万円×5%=50,000円
・退職金受給時
共有期間:なし
退職所得控除:800万円+〔70万×(30年-20年)〕=1,500万円
退職所得:(2,000万円-1,500万円)×1/2=250万円
所得税:250万円×10%-97,500円=152,500円
所得税合計:202,500円
このように、受け取りの順番によって所得が大きく異なり、一般に企業からの退職金の支払いを受ける年の5年以上前にiDeCoを受け取ると、退職所得控除の枠を有効に活用することができます。
また、iDeCoは受給方法を一時金方式と年金方式と選べますが、併用することも可能です。
退職金とiDeCo一時金の合計額が退職所得控除額を超える場合は、超える部分を年金方式で受け取ることで、所得税を抑えることができることもあります。
老後の資産形成に役立つiDeCoですが、受給の際は十分にご注ください。
税理士法人アイユーコンサルティングは土日祝日、遅い時間でもご相談のご予約が可能です。
事業承継でお困りの際には、是非ともご相談ください。