2026.10.06
【約60年ぶりの大改正】非上場株式評価の見直しで自社株はどうなる?経営者が知っておくべき影響とこれから講じるべき3つの事業承継対策
こんにちは。
中小企業の事業承継と相続に強い税理士法人アイユーコンサルティングです。
秋も深まり、朝夕の冷え込みが感じられる季節となりましたが、
皆様いかがお過ごしでしょうか。
約60年ぶりの大改正で「自社株の評価」が激変する?
現在、国税庁の「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」において、
非上場株式(自社株)の評価方法に関する
約60年ぶりの抜本的な見直し案が議論されています。
現行の評価ルールは1964年の導入以来長く運用されてきましたが、
評価額を過度に圧縮するスキームや評価方式による価格差が問題視され、
課税の公平性を保つための見直しが進められています。
今回の改正案は、従来の評価体系を根本から覆すものであり、
「利益が好調で内部留保(純資産)が分厚い優良企業」ほど株価が急上昇し、
相続税・贈与税の負担が大幅に増えるリスクが懸念されています。
本記事では、経営者やオーナー様に向けて、
今回の見直しの骨格と自社への影響、
そして今から準備しておくべき具体的対策を分かりやすく解説いたします。
1. 新しい評価ルール(残余利益方式)で何が変わるのか?
今回の見直し案の最大の焦点は、従来の会社規模に応じた
「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」の併用方式を廃止し、
「簿価純資産 + 将来の超過収益(残余利益)」という
単一の評価モデルへ一本化する方向で検討されている点です。
※上記算式は、国税庁の有識者会議資料に記載されている算式を基に、当社が独自に簡略化した試算イメージです。
①「業績が良い優良企業」ほど株価が上がりやすくなる
新ルールでは、企業の継続的な「稼ぐ力(残余利益)」と
「蓄積された純資産」をベースに株価を算定します。
その結果、過去の利益をしっかり蓄積してきた
高収益・高純資産のオーナー企業では、
改正後に自社株評価額が数倍に跳ね上がる可能性があります。
一方で、赤字続きの企業や小規模企業では、
株価が下がるケースも出てくると見込まれています。
② これまでの「定番節税スキーム」が使えなくなる?
これまで事業承継対策として多用されてきた以下のような手法に対し、
ピンポイントで規制が盛り込まれる見込みです。
- 不動産購入やホールディングス化による株価圧縮
資産の洗い替え不要やグループ一体評価の導入により、
不動産や組織再編の活用による対策が無効化される見込み。 - 役員退職金やオペレーティング・リースによる一時的な株価引き下げ
一過性の損益を除外した「正常利益」ベースで算定されるため、
単年度の損金づくりによる株価抑制が困難に。
2. 改正で特に影響を受ける企業の特徴
今回の見直しにより、
自社株の評価額や税負担に大きなインパクトを受ける
可能性の高い企業の特徴は以下の通りです。
表は左右にスクロールできます→
| 区分 | 主な特徴・条件 | 新ルール下での主なリスク |
|---|---|---|
| 高収益・高純資産企業 | ・従業員数70人超/売上15〜20億円超規模 ・過去の内部留保(純資産)が分厚い |
類似業種比準方式が廃止され、 自社株評価額が数倍に跳ね上がるリスク |
| ホールディングス・ グループ企業 |
・親会社が多数の優良子会社を傘下に持つ ・組織再編で大会社区分を維持 |
グループ一体評価の導入により、 再編スキームによる株価対策が無効化 |
| 対策スキーム 検討・実行済の企業 |
・不動産購入を検討・実行済 ・従業員持株会を組成済 |
資産の時価評価が不要となり 株価対策が無効化 従業員持株会規約上の固定価格総額を |
※資産管理会社等については特定の評価会社として現行の純資産価額方式をベースとした評価になる見込みですが、現時点では詳細の方向性は不明です。
3. 経営者が取り組むべき3つの事前対策
今後の制度決定や税制改正大綱の発表後に、
経営者の皆様が着手していくべき実務対策は以下の3点です。
(1) 現行と新ルールの「両建て試算」でリスクを把握する
まずは自社の株価が「現行ルール」と「新ルール案」でどのように変化するのか、
事前に概算試算(両建て試算)を行うことが第一歩です。
試算により潜在的な相続税リスクをあらかじめ把握しておくことで、
適切な打ち手を早期に検討できます。
(2) 現行ルールが使えるうちに「早期の株式移転」を検討する
試算の結果、新ルールで株価が急上昇することが予想される場合は、
新ルールの適用が始まる前のタイミングをとらえることが極めて有効です。
相続時精算課税制度や特例事業承継税制の活用を検討し、
現行の評価方式が使えるうちに後継者へ株式を集約・移転させる
選択肢が考えられます。
(3) 実行中・検討中の事業承継スキームを見直す
「不動産の購入」や「ホールディングス化」による株価対策を検討・実行中の方は、
将来的な節税効果が得られなくなる可能性をふまえ、
事業上の必要性や成長戦略としての意味合いを再検証する必要があります。
親族内での承継が難しい場合には、実態的な企業価値をベースとした
第三者承継(M&A)への舵切りも現実的な選択肢となります。
おわりに:自社株対策・事業承継のご相談はアイユーコンサルティングへ
今回の非上場株式評価の見直しは、日本のオーナー企業にとって
事業承継戦略そのものを根本から揺るがす大きな転換点となります。
制度が本格導入されてから慌てて動き出したのでは、
選択できる対策が限られ、後手に回ってしまうリスクが高まります。
変化の激しい時代だからこそ、まずは「自社の株価が今どうなっており、
将来どう変わるのか」を正しく把握することが重要です。
税理士法人アイユーコンサルティングでは、
豊富な事業承継・資産税コンサルティングの実績をもとに、
最新の税制動向に合わせた「株価試算」や
「最適な事業承継シミュレーション」をご提案しております。
「うちの会社の株価は上がりそうか?」「今やっている対策は大丈夫か?」など、
ご不安な点やご質問がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
■出典・参考情報
参考資料│国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」資料(第1回〜第6回)
※本記事は、上記有識者会議で公開された検討内容(2026年9月16日時点)および有識者会議資料の各論点を基に、執筆者が実務向けに試算・解説したものです。
今後の税制改正大綱の発表等により、内容が変更となる可能性がございます。

承継アドバイザリー部 部長/社員税理士
松下 孝司(まつした こうじ)
大学卒業後、IT企業のシステムエンジニアを経て税理士へ転身。国内大手税理士法人東京本部にて事業承継コンサルティングや相続税申告等を多数担当。福岡事務所異動後は財務・税務DD、中小企業投資減税サポート等幅広い業務に従事。2022年税理士法人アイユーコンサルティング入社、2024年1月より事業承継専門部隊「承継アドバイザリー部」部長に就任し、全国のオーナー企業の事業承継・自社株対策を手がけている。





















