2018.12.10
事業承継せずに社長が急逝してしまったら…
こんにちは。中小企業の事業承継に強い税理士法人アイユーコンサルティングです。
今回は、事業承継を終えずにご相続が発生してしまったA社についてお話します。テーマは「事業承継の準備は早いに越したことはない」です。
北陸で老舗の繊維の製造卸を営むA社。創業80年を迎える。現社長は67歳の三代目社長。
その三代目社長は非常に敏腕で、従来の国内販売のみの営業スタイルを拡張し、有力な商社と連携し、海外販売への活路を開くことに成功した。
売上規模は二代目社長時から1.5倍に拡大、直近では30億円に達しようという規模になっていた。利益率も非常に高く、毎期の税引前利益は安定的に1億円を超えている。純資産も前期末時点で7億円に達した。
一方で、この「超」がつくほどの優良企業ならではの悩みがある。そう、株式の承継だ。
A社の株主は100%現社長が保有している。つまり、社長に万が一があれば、すべてが相続財産に計上され、相続税の課税財産となってしまう。
相続税評価額で約4億円。A社株式に係る相続税は約1.7億円にもなるのだ。上場株式の相続と異なり、非上場株式のそれで厄介なのは、換価性がないにも関わらず相続税が課税されるところにある。
このA社、事業承継を終えずに三代目社長が急逝してしまったのだ…
A社のその後であるが、まだ若い次男がいきなり社長につくわけにもいかず、一時的に営業部長が社長職を必死にこなしている。
しかし、いややはりを言うべきだが、売上は落ちている。懸案の社長の相続についても困難を極めていた。社長の急逝から3年たった現在においても、尚解決していない。社長の財産の多くはA社株式と不動産で、現預金の割合は多くない。つまり、遺産分割しにくい財産が大方を占めるため、相続人間で納得いく協議にならないという問題になってしまっていたのだ。
相続人は、後継者である次男含めた3人兄妹だった。会社務めをしているが上司と折り合いが悪く閑職の兄と、バツイチで無職の妹である。
後継者(次男)は心身ともに疲弊しきっていた。まだ社長ではないが会社を支える日々の業務を行いながら、遺産争続という家族との争いにも巻き込まれていたのだ。
(次男)「おれが兄と妹に、株式の分を支払うための借金もしないといけないんだよな…」
1.7億円という多額の相続税に加え、兄妹への代償金を合わせると必要資金はざっと3.2億円だった。兄妹への支払いは3年の分割払いという調整がついたが、相続税の支払いは待ってくれない。
次男は税理士に相談し、A社と金融機関から借入れて、なんとか支払いをした。だが、A社としても、兄妹の株の買い取り資金の一部も含めた形となったため、資金計画にない突発的なキャッシュアウトとなった。資金繰りも相当に厳しい。何とか持ちこたえて欲しいと祈るばかりである。
人生は何が起こるかわからない。いつ生命の終わりがくるかは、誰にもわからない。ただ、一つだけ言えることがある。「社長は、いつ何が起きても大丈夫な準備をしておく必要がある」ということだ。
事業承継計画は、現社長が「生涯現役」を貫いているその時点から考えていくべきだろう。まだまだ社長が知力体力的にも充実し、多くのことを考え実行できる60歳前後の若いその時から。家族、会社と従業員、皆の命運がかかっているからには、準備をしてしすぎることは絶対にないのだ。
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税理士法人アイユーコンサルティング
関東統括
出川裕基