給与所得者の特定支出控除における特例措置の一部緩和について |ブログ|アイユーコンサルティンググループ

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給与所得者の特定支出控除における特例措置の一部緩和について

給与所得者の特定支出控除における特例措置の一部緩和について | 注目

こんにちは。

中小企業の事業承継と成長支援に強いアイユーコンサルティンググループです。

蒸し暑い日々が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

さて、今回は令和5年度税制改正のうち、特定支出控除について解説致します。

 

■制度の概要及び改正の趣旨

個人事業主や法人は売上に対して経費を計上することができますが、給与所得者であるサラリーマンについては、基本的に給与収入に対して必要経費を計上することが認められていません。ただし、給与所得者には給与所得控除額というものがあり、概算経費のような形で給与の金額に応じて一定額を控除することができます。逆に言えば給与所得者については、この概算経費しか認められておらず、個人事業主や法人に比して、所得を圧縮する選択肢が限りなく少ないことになります。

他方、そんな給与所得者でも経費を計上できる「特定支出控除」というものがあります。

特定支出控除は特定支出をした場合には、上述した給与所得から一定額を控除できるという制度です。しかし特定支出控除は適用要件が厳しく中々制度の波及に至っていないのが現状です。認知度もそこまで高くないでしょう。

令和5年の税制改正においてはその特定支出控除の適用要件が緩和されることとなりました。改正の趣旨としては制度の波及や自ら取り組む社外研修への参加や通信教育、資格取得等に係る費用を特定支出控除とすることで個々人の自発的な学び直しを後押しする狙いがあるのではないかと考えられます。

 

■現行の制度

特定支出控除を端的に述べるのであれば業務に直接必要な支出が一定額を超えれば、給与所得を圧縮することができる、という制度です。

具体例を挙げると、年収500万円の方では給与所得控除が1,440,000円、特定支出控除額の適用判定の基準となる金額は給与所得控除の1/2なので720,000円(1,440,000円×1/2)となります。

この720,000円という金額以上に特定支出の金額を払っている場合には、その720,000円を超えた部分が所得控除の対象と言うことになります。

先ほどのケースで仮に年収500万円の方の特定支出額が1,000,000円だとすると、280,000円(1,000,000円-720,000円)が特定支出控除の対象額となるため、確定申告を行うと所得税住民税合わせて56,000円の節税効果が生まれます。(※所得税住民税合わせて税率20%として計算)

無論、特定支出控除の適用を受けるためには、多額の支出があることが大前提ではありますが、サラリーマンであれば業務上に直接必要とされる英会話学校や大学院に通ったり、簿記や宅建などの資格取得を目指すことが一度や二度はあろうかと思います。そのための多額な支出を特定支出控除にできるかどうか、検討の余地があるということをご留意頂ければと思います。

 

特定支出として認められる支出は下記のとおりです。

  • 1.一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出(通勤費)
  • 2.勤務する場所を離れて職務を遂行するための直接必要な旅行のために通常必要な支出(職務上の旅費)
  • 3.転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出(転居費)
  • 4.職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出(研修費)
  • 5.職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格取得費)
  • 6.単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出(帰宅旅費)
  • 7.図書費、衣服費、交際費などでその支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの(限度額65万円)

 

なお、この特定支出控除を受けるためには、確定申告を行う必要があり、その際に特定支出に関する明細書および、給与の支払者の証明書を申告書に添付するとともに、その特定支出に要した金額を証する書類をあわせて提出しなければなりません。

 

■改正後の制度

上述した給与の支払者の証明書ですが、ここで言う「給与の支払者」とはサラリーマンで言えば雇用先の会社となります。特定支出控除については制度が波及していないことも相まってか、給与の支払者が制度自体を理解していなかったり、理解していたとしてもそもそも給与の支払者との関係性が良好でなければ発行すら難しいケースも出てくるかと思います。

そのため、現行の制度では特定支出控除の適用を受けるためには、適用対象となる金額の支出の有無以上にこの証明要件がネックになっているとも言えます。

改正後についてはこの証明書について、厚生労働大臣が指定する教育訓練給付指定講座を受講した場合には、給与の支払者に代わり、国家資格であるキャリアコンサルタントが証明を行うことを認めることとするとされています。

つまり教育訓練給付指定講座を受講した場合は給与の支払者に証明を受ける必要がなく、その証明を外部に任せることができるため、当該制度の適用を受ける要件が緩和されたと言えるでしょう。

資格取得に要する費用などは金額が多額に及ぶものも少なくないため、少しでも税負担を少なくする余地があるのなら、知識として備えておいて損はないでしょう。

なお、先に述べた教育訓練給付指定講座に係る教育訓練給付金を受給する場合には、特定支出となるのは研修等に係る費用から受給した給付金を控除した金額になる点に注意が必要です。

 

■最後に

いかがでしたでしょうか?

特定支出控除についてはまだまだ認知度が低く、適用対象者も限定的かと思いますが、働きながら資格取得を目指す方などには是非とも積極的に利用してほしい制度となっております。

制度適用にあたっては税理士と一緒に検討してみてはいかがでしょうか。

 

税務に関するお悩みがある方は、アイユーコンサルティンググループまでお気軽にご相談ください。

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