2024.12.11
海外移住前に知っておきたい!所得税・相続税・贈与税の課税ルール
こんにちは。
中小企業の事業承継と成長支援に強いアイユーコンサルティンググループです。
寒さもひとしお身にしみるころとなりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
所得税、相続税及び贈与税は、居住者・非居住者の区分によって課税ルールが大きく異なります。海外移住や国際的な資産運用を検討する方にとって、これらの違いを理解することは欠かせません。
本記事では、それぞれの課税関係をわかりやすく解説します。
1.《所得税》における居住者と非居住者の違い
所得税では、居住者とは、国内に住所を有し、または、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、居住者以外の個人を非居住者と規定しており、課税対象となる所得が居住者か非居住者かによって異なります。
(1)居住者の場合
日本国内外すべての所得が課税対象となります(無制限納税義務者)。
例えば、日本に住所を持ちながら海外で得た不動産所得も課税対象となります。
(2)非居住者の場合
日本国内源泉所得のみに課税されます(制限納税義務者)。
例えば、非居住者が日本国内で賃貸している不動産から得た所得は課税対象となりますが、日本国外での所得は課税されません。
183日ルールとは、その年のうち183日以上日本に滞在した場合に「居住者」とみなされる判定基準です。
「居住者」として判定されると、日本国内外の財産が課税対象になる一方で、183日未満の場合は「非居住者」として扱われ、日本国内の財産にのみ課税されます。
そのため、長期的な滞在予定や海外での資産運用を考える際には、このルールを理解し、課税対象となる所得を把握することが重要です。
2.《相続税・贈与税》における居住者・非居住者の違い
(1) 居住者の場合
被相続人や贈与者が居住者である場合、相続人・受贈者が居住者・非居住者に関係なく、その財産が日本国内外を問わず課税対象となります。
例えば、被相続人が日本に居住している場合、海外にある不動産や預金も相続税の課税対象となります。また、贈与者が日本に居住している場合、贈与先が日本国外であっても課税されることとなります。
(2)非居住者の場合
被相続人や贈与者が非居住者で過去10年間日本に住所を有していない場合、課税対象となるのは日本国内の財産に限定されます。この場合、相続人、受贈者も一定の要件を満たした非居住者である必要があるので注意が必要です。
例えば、被相続人が海外に居住し、海外に資産を持っている場合、その財産は日本の相続税の課税対象外となります。また、贈与者が日本国外に居住している場合、贈与された財産が日本国内のものでない限り、贈与税は課されません。
183日ルールは主に所得税の居住者判定で使われますが、その判定基準は相続税・贈与税にも関係します。
1.183日を超えて日本に滞在している場合
その年の途中でも「居住者」とみなされるため、財産の移転が発生した場合には日本の相続税・贈与税の対象になります。
2.短期滞在者の場合
一方で、日本国内での滞在が短期間であれば「非居住者」として扱われるため、日本国内の財産のみ課税対象となります。
国際的な財産移転が関わる場合、日本と他国の間で結ばれた租税条約が適用されることがあります。この条約により、以下が調整されることがあります。
・二重課税の回避
・優先的に課税権を持つ国の決定
例えば、ある国との租税条約で「財産の所在地国が優先して課税権を持つ」と定められている場合、日本では課税されない可能性があります。
上記を踏まえて、以下に注意しながら課税関係を整理することが必要です。
・日本に住所を持っているか?
・日本国外での滞在期間がどの程度か?
2.財産の所在地を確認する
・課税対象となる財産が国内外のどこにあるか?
3.租税条約の内容を確認する
・日本と関係する国との租税条約の内容を把握し、適用範囲を確認する。