2020.02.10
財務デューデリジェンス(DD)とは?
こんにちは。中小企業の事業承継に強い税理士法人アイユーコンサルティングです。
今回は、いつもと少し内容を変えて、以前、税理士のM&A仕事術でご紹介したデューデリジェンス(DD)のうち、税理士の主戦場である「財務DD」についてより詳しく見ていきたいと思います
<DDの概要>
まずDDとは、企業の買収等に際して、買収企業や事業(以下、「ターゲット」とします。)などを対象として行う調査のことをいいますが、その目的は、企業買収を検討している会社(以下、「買い手」とします。)が、当該買収を成功させるために、ターゲットをより理解し、当該買収にかかわる様々なリスク要因を事前に明らかにして評価することにあります。
ターゲットは、事業活動を行う上で様々なリスク要因(ex.市場、顧客、製品、サービス、事業、財務、税務、法務等)にさらされていますが、通常、買い手は買収の初期段階におい当該リスク要因に関する情報面でターゲットと比較して不利な立場にあるため、情報を入手し、交渉を有利に進めるためにDDを実施します。
とりわけ財務DDで得られた情報は、買収価格算定のための基礎情報となりますが、それ以外にも買収の構造、買収契約書、買い手が想定する買収後のシナジー、買収後の買い手財務諸表への影響、買収後の統合作業計画など、様々な分野における検討材料となります。そして、この情報収集作業こそが我々税理士の仕事となります。
<財務DDとは>
財務DDとは、より財務面に焦点を当てて行うDDのことです。調査対象となるターゲットの財務情報は、過去の財務情報(PL,CF)や現在の財務情報(BS)のみならず、事業計画など将来の財務情報も調査対象に含まれます。
財務DDは財務諸表監査とは異なり、画一的な基準がないため、買い手のニーズとターゲットの状況を見ながら、時間的、物理的制約の中で、最も効果的かつ効率的な調査を実施する観点から実施する手続を決定しますが、通常、ターゲットの情報へのアクセスには一定の制限があることが多く、また時間的制約もあるため、問題点を確認するための手続は限定的にならざるを得ません。したがって、問題点や課題を確認するためには、ターゲットのマネジメントとのディスカッションが非常に重要な手続となります。
なお、財務DDの報告書は監査報告書とは異なり、画一的な様式は存在しませんので、全体的な結論は記載されないのが通常です。また、監査済財務諸表についても財務DDは必要となります。なぜなら、財務DDは財務会計の枠組みを超えたターゲットの実態を明らかにするものであり、監査済財務諸表に対しても一定の調整を加える必要があるからです。この調整を加えることによって、損益計算書分析や貸借対照表分析などといった、具体的な調査が可能となります。
では次に、先述の損益計算書分析や貸借対照表分析などといった具体的な調査方法について簡単にご紹介したいと思います。
(損益計算書分析)
調査対象期間の損益計算書項目の調査により、ターゲットの損益構造を把握し、正常収益力を算定するための分析です。売上については、セグメントや製品群ごと、主要顧客ごとに細分化して分析し、売上原価や販管費については費目別のみならず、固定費と変動費へ分解して分析を行うというように、様々な切り口から損益計算書項目について分析します。なおここでは、過去の営業利益から非経常的な損益や非継続的な損益を除外した正常収益力を把握し、その後の事業計画分析に役立てることも考慮します。
(キャッシュ・フロー分析)
調査対象期間におけるターゲットのキャッシュ・フローの発生状況を把握するための分析です。具体的にはキャッシュ・フロー計算書の各項目ごとの推移分析や、フリー・キャッシュ・フロー(税引後営業利益±運転資本増減+減価償却費-資本的支出)を特定して分析することが主眼です。この分析により、DCF法(企業価値評価で利用される手法のひとつ)で利用される将来CFの基礎が把握できるほか、会計上の利益とCFの関係を理解することが可能となります。この分析により、正常な運転資本(売上債権+棚卸資産-仕入債務)の水準が把握できるため、短期的な資金調達の必要性を把握することでき、また資本的支出部分に焦点を当てることで、買収後の追加の設備投資の要否を判断し、将来CFに与える影響を見積もることも可能となります。
(貸借対照表分析)
調査基準日の貸借対照表項目の内容、それに関連する潜在的なリスクを把握するための分析です。資産項目や負債項目を調査することにより、あるべき簿価純資産を算定し、そのうえで時価純資産に近似する修正簿価純資産を算定することが主眼となります。具体的には滞留債権への適切な貸倒引当金の設定、滞留在庫の簿価切下げ、土地等の時価評価、未認識の退職給付債務や訴訟リスクにつながる偶発債務(オフバランス項目)を把握し、これを純資産に反映させ、当該純資産を修正していくこととなります。
(事業計画分析)
ターゲット側が作成した、買い手に開示する事業計画の信頼性に関する分析です。事業計画は、将来CF等の情報を用いる企業価値の基礎となるもので、ビジネスDDにおいても検討の対象とされますが、財務DDではより数値面に重点をおいて分析します。具体的には、過去の実績の分析(損益計算書分析、キャッシュ・フロー分析)を基礎として、それとの数値面の連続性を確認する作業が中心であり、事業計画が前提としている重要な条件(仮定)を洗い出し、その前提条件が過去の実績から飛躍したものではないことを確認します。
将来のことは誰にも分らないので、最低でも過去との整合をとるというのがこの分析の基本スタンスです。
いかがでしたでしょうか。
やや分量が多くなりましたが、以上が財務DDの概要と代表的な調査方法となります。
弊社ではこのような財務DDにつきましてもご相談いただくことが可能となっておりますので、お困りの際は、お気軽にお問合せいただければ幸いです。
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