2019.01.15
税理士のM&A仕事術(1)
こんにちは。中小企業の事業承継に強い税理士法人アイユーコンサルティングです。
今回は、我々が最も得意としている事業承継手法の1つである親族内承継の手法ではなく、最近力を入れており、また事例が多くなってきている中小企業のM&Aの実態について少し書きたいと思います。
(1)中小企業のM&Aの実態
従来のM&Aは、大企業や上場会社の経営基盤強化(シェア強化)・新規事業参入・事業の多角化などを行う際の特別な経営手法として活用されていました。しかし、近年「M&A」という言葉自体、中小企業にも身近なものとなり、中小企業にとってもM&Aは重要な経営戦略もしくは重要な事業承継の一手法として認識されつつあります。
実際には、従前からHD経営によるグループ化や、取引先・同業者の救済合併、マーケットリーダーによる代理店の整理などに、「株式譲渡」や「吸収合併」、「営業権譲渡」を主体とした企業の合併や買収は行われてきました。弊社が得意とする組織再編を活用してのHD化や救済合併を行うケースも少なくありませんでした。
しかしながら、ここ2~3年の間においては、特にM&A専門仲介会社や、メインバンク、さらに証券会社などを情報源として、中小企業においても戦略的に買収先や事業承継としての譲渡先を探すケースが目立ってきています。
今後はますます、中小企業においても、企業の成長戦略もしくは自社の事業承継の一環としてのM&Aが増加していくものと考えられます。
下記の図表は、M&A件数の推移及び中小企業のM&A仲介の成約組数ですが、リーマン前は大企業中心・リーマン後は中小企業中心に順調に伸ばしています。
中小企業庁「M&Aの現状」より抜粋
(2)事業承継の一環としてのM&A
中小企業の経営者にとって、後継者問題は大きな経営課題のひとつです。しかしながら、人材確保が難しい中小企業にとって後継者候補を確保するのは容易ではありません。昔と違って核家族化が進み、同族関係者の中での適当な人材がいないことや、求人雑誌への掲載や人材紹介会社の利用はコスト負担が大きいうえに自社で収集できる人材情報の不足もあって、後継者の育成を考え始めても会社の経営を任せられる人材がいないという悩みは、自社だけでは解決の糸口を見いだせなくなってきています。
一方、若い経営者にも同様の問題が直面する場合があります。創業してすぐに事業が軌道に乗り成功し、会社(事業)を売却したい場合や、別の事業への転換を図りたい場合です。この場合、多くの会社では社内に、「COO」たる業務を統括できるNO2社員が育ってはいますが、オーナーとして会社を引き継ぐとなると、経営者としての資質が備わっていない場合が多く、また資金的負担も大きく、容易に解決できないことがほとんどです。
また、これらに共通する問題として「借入金の個人保証」が挙げられます。多くの中小企業は出資・増資による「直接金融」ではなく、金融機関からの融資による「間接金融」に頼った経営を行っています。むしろ中小企業で無借金経営を行っているものは、全体割合の1%未満という数少ないもので、親族内外含め少なからず間接金融にて経営を行っているものです。当然のことながら、会社の経営者=代表者が個人保証をしていることが多く、後継者が巨額の債務を肩代わりすることが事業承継をより困難なものにしています。
上記のように様々な経営課題を抱えている中小企業のオーナー経営者にとって、M&Aを活用することは継続企業として繁栄させるための1つの術と言えるでしょう。
(3)M&Aの手法一覧
M&A時の買い手側の手法は大きく①買収 ②合併 ③分割の3つに分類することができます。
大まかに図表化してみました。
詳しくは、今後シリーズ化する予定の税理士のM&A仕事術(2)に書きたいと思います。
税理士法人アイユーコンサルティングは、組織再編を活用した親族内承継だけではなく、M&Aを活用した親族外承継にも力を入れており、今年も「中小企業の100年企業」のお手伝いを全力で行ってまいります。