2022.06.06
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置が改正!どこが変わったの?
こんにちは。
中小企業の事業承継と成長支援に強いアイユーコンサルティンググループです。
蒸し暑い日々が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回は令和4年度税制改正項目のひとつである直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税措置の改正について解説いたします。
<直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税措置の改正>
当該措置は、贈与を受けた者ごとに省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までの住宅取得等資金の贈与が非課税となる制度です。改正概要と適用時期は以下のとおりです。
1.改正概要
・適用期限が2023年(令和5年)12月31日まで2年延長(改正前2021年(令和3年)12月31日まで)されました。
・非課税限度額が改正されました。
・適用対象となる既存住宅用家屋の要件について、築年数要件が廃止され、新耐震基準に適合している住宅用家屋であることが加えられます。
・受贈者の年齢要件が18歳以上(改正前:20歳以上)に引き下げられました。
2.適用時期
令和4年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用されます。
ただし、受贈者の年齢要件の改正のみ令和4年4月1日以後の適用となります。
3.具体的な改正内容
見直し内容を改正前と改正後で比較すると、以下のようになります。
項 目 |
改正前 |
改正後 |
|
贈与時期 |
令和3年12月31日まで |
令和5年12月31日まで(2年間延長) |
|
贈与者 |
直系尊属 |
同左 |
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契約締結日 |
令和2年4月1日から令和3年12月31日まで |
新築等に係る契約締結時期は考慮されない |
|
非課税 限度額 |
良質な住宅用家屋 |
消費税率10%:1,500万円 上記以外:1,000万円 |
1,000万円 |
上記以外の家屋 |
消費税率10%:1,000万円 上記以外:500万円 |
500万円 |
|
既存住宅用家屋の要件 |
建築後使用されたことのない住宅用家屋 |
同左 |
|
建築後使用されたことのある住宅用家屋で、その取得の日以前20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)に建築されたもの |
新耐震基準の適合するもの ※登記簿上の建築日付が1982年(昭和57年)1月1日以降の家屋については、新耐震基準に適合している住宅用家屋とみなす ※築年数要件は廃止 |
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建築後使用されたことのある住宅用家屋で、地震に対する安全性に係る基準に適合するものであることが一定の書類により証明されたもの |
同左 |
||
耐震改修について都道府県知事などに申請をし、かつ、贈与を受けた翌年3月15日までに耐震基準に適合することとなったことにつき、一定の証明書等により証明がされたもの |
同左 |
||
受贈者の年齢 |
20歳以上 |
18歳以上(令和4年4月1日以後) |
|
受贈者の所得金額 |
贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下 ※家屋の床面積40~50㎡の場合は1,000万円以下 |
同左 |
4.留意点
イ.住宅取得等資金の贈与は「特別受益」に該当します。
特別受益とは、いわゆる生前贈与のことです。贈与者に相続が発生し、相続人のうち被相続人から贈与を受けていた人と受けていない人が混在する場合には、相続時における被相続人の遺産額を法定相続分で分けることに対して相続人間で不公平感が生じてしまうケースがあります。
このような場合には特別受益の額を相続時における被相続人の遺産額に足し戻して法定相続分を計算することになります。
ロ.将来の相続税負担が重くなる可能性があります。
相続税において土地評価額を算定する際に一定の要件を満たすことで「小規模宅地等の特例」という制度が適用可能です。土地の使用方法によって適用面積や評価減の割合が異なりますが、被相続人の自宅であれば最大80%の評価減が適用されます。例えば、相続税評価額が3,000万円の土地の場合には600万円(2,400万円減額)として申告することが可能です。
ただし、子が自己の所有している家屋に居住している場合は、親の相続発生時に小規模宅地等の特例が適用できず、結果として相続税の負担が重くなってしまいます。数十万円~数百万円の規模で相続税の負担が増加する可能性があります。
上記の通り、小規模宅地等の特例はその土地評価額の減額効果が大きいため相続税計算において非常に重要な要素となり、あえて住宅取得等資金の贈与を適用しないという選択肢も存在することでしょう。
いかがでしたでしょうか?
適用期限の2年延長や既存住宅用家屋の築年数要件の廃止、受贈者の年齢要件の引き下げなど非課税限度額は年々減額されておりますが、要件は緩和されているため本特例の適用対象となる方が増えることが予想されます。一方、本特例による贈与を適用しない方が有利になるケースも存在するため、当該非課税措置をご利用の際は、専門家へ相談の上、慎重にご検討をお願い致します。
税務に関するお悩みがある方は、アイユーコンサルティンググループまでお気軽にご相談ください。